アルヴァレス父子が巨大隕石衝突説を唱えるようになった発端は、北イタリアのグビオ峡谷のK-T境界粘土層で見出された異常に高いイリジウム濃度(イリジウム・スパイク)である。
イリジウム・スパイクはグビオばかりでなく、遠隔地のK-T境界でも認められた。
イリジウムは白金族の元素であるが、鉄とともに地球の芯の部分に分布し地殻内にはほとんど存在しない。
一方、隕石中には高濃度で存在する。
そこでK-T境界のイリジウム・スパイクは隕石由来と推察したわけである。
K-T境界におけるイリジウム濃度と地球表面積から推定されるイリジウムの総量は約20t。
隕石の平均密度とイリジウム含有率から逆算すると、これだけのイリジウムをもたらす隕石の直径は約10km、形成されるクレーターは直径約200kmと計算される。
好奇心旺盛な物理学者による見事な推計というしかない。

 アルヴァレス父子による仮説は、地球史観を大きく変え、「地球外天体によって地球環境・生物界の激変が生じる」という新しい考え方をもたらした。
最近この考え方はさらに発展して、地質年代に記録されている生物の大絶滅は約2600万年の周期をもち、すべて巨大隕石衝突によるという状況証拠が集積されている。
そして、巨大隕石衝突の周期性は太陽が銀河系の赤道面を公転によって周期的に横切ることにより生じているという説が提唱されれるに至っている。
20世紀の末になって、生物種の絶滅・進化というテーマは、古生物学、地質学、分子生物学、さらに天文学まで巻き込んで論じられるようになったのである。
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